過去のプログラム

[2011.05]

ピアノリサイタル~時の駆けゆく中で~

◆シューマン「こどものためのアルバム 作品68」より 

1848年の作品。全部で43曲収められており、幼少者でも演奏できるよう易しく作られています。美味しい飴玉が集まったような作品集です。その中から4曲を選びました。

・No.3 ハミング 

・No.13 たのしい5月、もうすぐそこに

・No.15 春の歌

・No.17 朝の散歩

◆チャイコフスキー「こどものアルバム 作品39」より

の曲集は24曲からなる小品集です。1878年7月1日からわずか4日間で作成されました。子どものための音楽作品があまりに貧弱だ、シューマンのように、心惹きつける表題のやさしい小品を子どもたちのために作りたい、と手紙に書いていたチャイコフスキーが、その願いを実現させたのです。それは、彼がヨーロッパ旅行から帰った直後、ウクライナにある妹の家でのことでした。どの曲もバレエのような芸術性を感じさせられるものばかりです。その中から4曲を選んで演奏いたします。

・No.1 朝の祈り

・No.3 おかあさん

・No.22 ひばりの歌

・No.9 ワルツ

◆チャイコフスキー「四季 作品37」より

「四季」は12曲から成る作品集です。この曲集は、ペテルブルグで出されていた音楽雑誌への付録として、1875年の12月から翌年の11月まで毎月1曲ずつ、それぞれの月にふさわしい題材を選んで作られました。チャイコフスキーは当初、この企画に対してあまり気乗りがしなかったようですが、作品は本人の予想に反して大好評をもって迎えられ、人気を博しました。どこまでも続くロシアの大地を感じながら、3曲を演奏いたします。

・No.5 5月:白夜

・No.6 6月:舟歌

・No.7 7月:刈り入れの歌

◆ラヴェル「水の戯れ」

1901年の作品。ラヴェルの作風は、当時のパリ音楽院では異端的とみなされ、厳しい評価が下されていました。しかし、師のフォーレは彼の才能を認め、好意的に彼の作品を評しました。その恩師フォーレにこの曲はささげられています。初めてこの曲を聴いた子どもの頃、川の中に潜っていくような不思議な感覚を覚えました。大人になり実際に弾いてみると、自由なように聴こえても、実は精密に作曲されていることがわかりました。

◆ラヴェル「鏡」より

・No.4 道化師の朝の歌

1905年の作品。この時期作曲された作品の数々によって、ラヴェルは大家としての名声を確実なものにしていったそうです。ラヴェルがナイトクラブでジャズとスペイン音楽を特に好んで聴いていた、というエピソードや、彼自身の母方の家系にもスペイン的な血が流れていたことを知ると、この曲を作ったラヴェルの想いはきっと特別なものだったに違いない、と想像してしまいます。

◆シューマン「子どもの情景 作品15」

1838年の作品。大人からみた子どもの世界を表しているようです。シューマンは、1830年以来ピアノ曲ばかり、大作を次から次へと書いていきました。そのきわめて充実した創作期に書かれたこの曲集は、音すべてがシューマンによる心の詩であるように、難解かつ美しい芸術作品となっています。今回は曲間を取り、それぞれの作品の余韻をたっぷりと味わって次の作品の演奏に進むようにいたします。

・No.1 見知らぬ国から

・No.2 珍しいお話

・No.3 鬼ごっこ

・No.4 おねだりする子ども

・No.5 幸せいっぱい

・No.6 重大事件

・No.7 トロイメライ

・No.8 暖炉のそばで

・No.9 お馬の騎士

・No.10 けっこう真剣に

・No.11 怖がらせ

・No.12 おねむの子ども

・No.13 詩人は語る

◆プロコフィエフ「4つの小品 作品4」より

・No.3 絶望

・No.4 悪魔的暗示

1908年に行なわれた「現代音楽の夕べ」で、当時まだ17歳だったプロコフィエフは、自作の7つの小曲を弾き、そのうちの4曲をこの作品4にまとめて1913年に出版しました。これらの曲の斬新な印象は、100年経った今でも全く衰えていないように感じます。ぶつかりあう音の中からどこまでも澄みきったプロコフィエフの感性が浮かびあがってきて、怖いほどです。

◆ショパン「ポロネーズ第7番 作品61 〈幻想ポロネーズ〉」

1845‐46年の作品。1846年には、ジョルジュ・サンドとの9年にもわたる共同生活を解消し、この時期、ショパン自身も重い病を患っていました。そのような背景がこの曲の創作にどれほど影響しているのかは、今の私には判断がつきません。しかし、私がショパンの曲を演奏していつも感じていますのは、彼の音楽には人間の良心がある、ということです。そして、その孤独感や生命力あふれる音楽に接すると、「生きる喜び」のようなものを感じさせられます。18世紀の人だからこそ、かえって音楽も人間の身の丈に合ったものなのかも知れません。

 

[2006.10]「植村照ピアノリサイタル~ハプスブルグからロシアへの旅」

■ドヴォジャーク Antonĭn Leopold Dvoŕák(1841~1904)「スラヴ舞曲 第2集 作品72」より 第1番 Molto vivace

 ドヴォジャークは、チェコを代表する作曲家として知られています。この「スラヴ舞曲第2集」は、1886年に第1集と同じジムロック社から出版され、ともに大好評を博しました。もともとは、4手のピアノ作品として作曲、出版されましたが、あまりの大人気に、管弦楽版も続いて出版されたそうです。今回は、ベーレンライター社によるピアノ独奏版の楽譜を使用して演奏いたします。スラヴ的色彩を持つ賑やかでエネルギッシュな音楽となっています。

■モーツァルト  Wolfgang Amadeus Mozart(1756~1791)ピアノソナタ KV333  

 かつて、このソナタを含めた5つのソナタは「5つのパリ・ソナタ」と呼ばれ、モーツァルトのパリ滞在中に作られたと考えられていました。しかし最近ではKV330以降のソナタはすべてウィーン時代に作曲されたと考えられているそうです。思わず微笑んでしまいそうな愛らしい音楽と、壮大なスケールを感じさせるこのソナタの構築性に、天才モーツァルトを感じずにはいられません。

・ 第1楽章 Allegro 

・ 第2楽章  Andante cantabile  

・ 第3楽章  Allegretto grazioso 

■リスト Franz Liszt(1811~1886年)「シューベルト歌曲 トランスクリプション」より

春の想い

 リストはハンガリー生まれのドイツ人音楽家で、今日では特に、ピアニスト、作曲家として知られています。生地ライディンクは現在オーストリア領。両親はともにドイツ人(オーストリア人)で、父はハンガリーの大貴族エステルハージ家に仕えていました。‘ピアノの魔術師’と呼ばれていたリストは、自作の他に様々な編曲作品を残しています。中でも、シューベルトの歌曲のピアノ編曲は、シューベルトの音楽の魅力と、リスト本来の才能とが存分に発揮された、大変バランスの良い作品となっているように感じます。今回のコンサートでは、私自身が大好きな1曲を選びました。

■リスト Franz Liszt(1811~1886年)ハンガリー狂詩曲 第2番

 19曲あるリストの「ハンガリー狂詩曲」の中でも、良く知られた曲のひとつです。この曲の大きな構造は、ハンガリー舞曲の形式のひとつヴェルブンコシュ(チャールダーシュの前身で、異なるテンポをもった複数の楽節からなる)に影響されているそうです。リストらしい技巧を駆使し、演奏者、聴き手の両方を次第に引き込んでいく、演奏会用の大変魅力ある作品だと思います。

■ベートーヴェン Ludwig van Beethoven(1770~1827)ヴァイオリンソナタ 第9番 Op.47‘クロイツェル’

 1803年(33歳)の作品です。同年、ウィーンにて初演されました。有名な「交響曲第3番」を完成したのもこの年で、翌年には「熱情ソナタ」の傑作も完成させています。ベートーヴェンは、このクロイツェルのソナタを、「協奏曲のように、きわめて協奏的なスタイルで書かれたヴァイオリン助奏をもつピアノのためのソナタ」として書いたそうです。フランスのヴァイオリニスト、ルドルフ・クロイツェル(Rodolphe Kreutzer)に献呈されました。規模も大きく、生命力がみなぎった作品です。

・ 第1楽章 Adagio sostenuto-Presto-Adagio-TempoⅠ

・ 第2楽章 Andante con Variazioni Ⅰ-Ⅳ

・ 第3楽章 Finale. Presto

■チャイコフスキー P.I.Tchaikowsky(1840~1893)ピアノ曲集「四季」Op.37より 
 この曲集は、1年の12ヶ月のそれぞれの性格を音で描いたもので、「12の性格的小品」という副題がついています。しかし、ロシアは当時旧暦を用いていたので、12月の季節感は新暦のものと多少ずれています(10月は現在の11月に相当)。ペテルブルグの音楽雑誌『nouvelliste』の1876年1月号から12月号にかけて、月々の特色にマッチしたロシアの詩を選び、その詩の性格を描写したピアノ曲を載せる企画があり、チャイコフスキーに作曲が依頼されました。作曲年は1875年12月から1876年11月で、全曲まとめて曲集として出版されたのは1885年です。お話や絵が浮かんできそうな曲集です。本日はこれからの季節にふさわしい3曲を選んで演奏いたします。
・ 10月 「秋の歌」 d-moll Andante doloroso e molto cantabile
・ 11月 「トロイカ」 E-dur Allegro moderato
・ 12月 「クリスマス」 As-dur Tempo di Valse
■アントン・ルービンシュタイン Anton Rubinshtein (1829~1894) ペテルブルグの夜会 Op.44 より
ロマンス 変ホ長調 
 1860年の作品。アントン・ルービンシュタインは現在のモルドヴァ共和国で生まれました。当時はロシア帝国です。後に数多くの大ピアニストを輩出するロシア・ピアニズムの源流に位置付けられています。一時はリストに師事しました。ピアノの機能を限界まで使うかのような力強い演奏を、特徴としていたようです。1848年からは祖国に戻って、ロシア皇室のピアノ教師になるとともに演奏活動も続け、1861年にはペテルブルグ音楽院を設立しました。
この曲を弾くと、11年前にチェコ国境近くのポーランドの村で経験した「夜会」を思い出します。各テーブルにキャンドルを灯し、そのぼんやりとした光の中で繰り広げられる幻想的なピアノコンサート。ワインを片手に、静かな音楽の時が流れていきます。そのような特別なコンサートに出演する機会を与えていただいた私は、雰囲気そのものに圧倒され、日本でのクラシック音楽とは何だろうか、と随分考えさせられました。さまざまな想いが巡る1曲です。